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各研究部門からのお知らせ

【留学日記】デンマーク工科大学:笹沼菜々子さん(理工学研究科博士後期課程)

新エネルギー研究部門

2023.10.10

地域戦略研究所の本田明弘教授が指導している理工学研究科博士後期課程2年の笹沼菜々子さん。
現在、デンマーク工科大学(Technical University, Denmark)に1年間の予定で留学中です。
現地での元気な様子が届きました。

笹沼菜々子さん【理工学研究科博士後期課程】

—デンマーク工科大学へ留学するきっかけを教えてください

2023年9月からデンマーク工科大学(Technical University, Denmark(DTU))のWind and Energy Systemsという40年以上の風力研究の歴史がある研究所に留学をさせて頂いています。
デンマークにきてからちょうど2か月が経ち、生活にも慣れてきましたので、ここで簡単に留学生活を報告させていただこうと思います。
その前に、私が何故、こちらの大学に留学を決めたのかについてですが、理由は大きく3つあります。
まずは、風力分野で世界トップレベルの研究者が集まり、豊富な経験と知識がある方たちに揉まれることで、自分の研究に対する知識を深めたいと思ったからです。
2つ目に、ここで働く研究者やスタッフは国籍が38か国と多様性に優れており、国際色が強い環境に憧れを抱いたからです。
最後に、世界で一番シェアを持つVestasという風車メーカーをもち、デンマークの電力電源の半分以上が風力で賄われている国、デンマーク自体に惹かれたからです。
実際に行って、国、デンマークの人々のエコに対する行動を生で見て、感じたいと思い、今回の留学を決めました。

DTUの玄関口

【研究について】

—毎日の研究はどのように行っているのですか?

まず、研究に関してですが、私の研究テーマは「複雑地形における風車後流の風車の性能、荷重への影響検討」です。
簡単にいうと、山岳地帯における風車の後ろの風の流れが発電量や風車へのダメージにどれだけ影響するのかを検討しています。
9月の初旬に博士後期課程の学生(PhD)を対象にPhD Dayというイベントが開催されました。
そこでは、研究者としての心得や、論文を書く際にわきまえることなど、普段は意図して意識しないことをワークショップを通じて学びました。
また、各人が各自の研究内容をA0のポスターにして、他のPhDの学生や研究者の方々との意見交換の場がありました。
風力の分野に所属しながらも、自分の専門とは異なる分野の内容は興味深かったですし、研究に対するコメントなどを頂き充実した時間を過ごしました。
普段は、2週間に一度、DTUの先生方と研究の進捗報告をして、現時点の立ち位置とこれから何をしていかないといけないかを認識できる時間にしています。
先生方は気さくで、何でも真摯に話をしてくれて、とても良い環境で研究ができていると感じています。

ポスターセッションの様子(中央が笹沼さん)

笹沼さんのポスター

【勉強について】

—日々の勉強も大変そうですが、何か工夫は?

研究とは別に週に一度、研究に関する授業を受けています。
内容は、「風車の空気力学、制御や荷重」についてです。
水曜日の朝9時から17時までとタイトなスケジュールのコースですが、ただ授業を一方的に受けるだけではなく、授業中であっても先生に質問ができ、積極的な相互の意思疎通を感じられます。
授業の課題は個人作業ではなくグループでの作業を基本とするので、授業外でもディスカッションが行われ、一人の作業では思いつかないような意見が出て、深い学びが得られています。
また、欧州では一旦社会に出てから学びなおすことは珍しくなく、グループメンバーの中には風力の分野での社会経験をした人もいて、違った視点での見方を提案してくれるのも面白いです。

授業の様子

【生活について】

—どのように日々を過ごしていますか?

デンマークでの生活に関してですが、総合的に治安もよく、公共交通機関が発達しており、気候もそこまで暑くもなく寒くもなく、とても過ごしやすいです。
マイナスの面をしいて言えば、税金が高いことと、円安ということもあり、全ての値段が高く感じられます。
大学の食堂の食事は、野菜がメインで、あまり濃い味付けではないので、健康にはいいのかなと思います。また、学生証があると多少の学割が効きます。
家は、大学から少し離れた大学の寮で、多国籍の人が住んでいます。
階ごとに共同のキッチンがあり、時間が合えば、みんなで料理を作ったり、その日あったことを話したりなど、協力しあいながら、生活しています。

ある日の寮の様子

【デンマークで思うこと】

—この数か月で、笹沼さんが考えたことがあれば、教えてください

ある日、コペンハーゲン市内にあるごみ処理施設Copenhillのツアーに参加してきました。
デンマーク政府が定める2025年までにカーボンニュートラル達成に向けて、ごみを減らす取り組みが行われています。
2019年にごみの焼却所かつ発電所でもあるCopenhillが設立されました。
ごみを燃やした際に出る蒸気でタービンを回し、発電する仕組みですが、そのうち3割を電気に、7割を熱として使われています。
一番驚いたことが、ごみ処理施設と聞くと、汚く、臭いイメージがありますが、ここCopenhillでは、建物自体のデザイン性に長けており、なんと屋根には傾斜をつけ芝生が敷かれていること。そのうえでスキーができたり、中にはカフェやレストランがあり、娯楽施設としても利用されています。
また、こちらに来て驚いたことの一つに自転車の利用率があります。どこの道路にも自転車専用道路があり、通勤や通学、普段の買い物に老若男女の人が自転車を使っています。
これも政府が自転車専用道路を導入したことで、車を使う人が減り、自転車を使う人が増えたそうです。
デンマーク政府のエネルギーに対する真摯に取り組む姿勢やそれに対し、デンマークの人々が賛同し、受け入れている環境であることが、実際の生活を通して、身に染みて感じました。
一方で、こうした結果の背景には幾つもの失敗があり、それを一つずつ乗り越えてきたからこそ、今の形に落ち着いているのだと思います。
日本もエネルギー資源が少ないとはいえ、包装紙の削減や夜の照明量の削減などまだまだやれることはあり、変えられるのではないかなと感じます。

Copenhillの外観

 

生活の一部である自転車

【これから】

—充実した日々ですね。これからもがんばってくださいね!

まだ、2か月しか経っていないので、まだ見えていない部分もあるとも思いますが、一歩ずつ研究もそうですし、人として成長できたらと思います。
これから冬に向けてビタミンを蓄えて、気持ちが参らないように対策していくつもりです。

 

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